絵馬講

- 伊邪那岐(いざなぎ)神社
- 鎮座地:葛城市南今市246番地
- 祭神:伊弉諾命、天児屋根命
- 南今市の集落の西端に近く、岩橋山を背景とした森の繁みの中に鎮座する。旧御所・吉野街道から真西へ分かれる分岐点が参道の入り口になっている。拝殿に数多くの絵馬が奉納され、近隣の人々の信仰の深さを物語る
10月14日(土曜日)の夕方、葛城市南今市、伊邪那岐神社の秋祭りの宵宮に、神社拝殿の床に三十六歌仙絵馬36枚をずらりと並べ奉納するという、珍しい行事が行われました。絵馬は南今市の8軒の家が所有するもので、この8軒が「絵馬(えんま)講」と呼ばれています。
午後6時、本年の当屋を務める仲川治さん(大正8年生まれ)が木箱の蓋を開け、中の歌仙絵馬を取り出して並べ始めました。多少のかすれはありますが、どれも色鮮やかな極彩色で描かれています。ろうそくの灯かりが揺らぐ拝殿に36枚がずらりと並ぶと、荘厳な雰囲気に包まれます。ところが、1時間もするとこれらは再び木箱にしまわれ、翌年のこの日まで、次の当屋の家で静かに眠ることになるのです。
なんとも、もったいないような、不思議な行事で、県下でも毎年宵宮に絵馬奉納を繰り返しているものは珍しいそうです。

抱えてきた木箱の中には、36枚の絵馬がぎっしりと

裏書されている順番を確認しながら、一枚一枚ていねいに並べていく

「やれやれ」。並べ終わって一服していると、村の人々がお参りに訪れ始める

長尾神社の巫女さんも到着。鈴の舞を舞ったあと、参拝者の頭の上でお祓いをする
「行事に何の意味があるのか、全く分かりませんねん」と、仲川さん。しかし木箱の蓋には『宝永六年(1709)八月』とあり、三百年にわたり淡々と続けられてきた歴史の長さを語っています。葛城山麓一帯に根強く残る、絵馬奉納習俗の一端を知ることのできる行事。今後も子孫の皆さんの手で、ずっと守り続けてほしいものです。

「三十六歌仙図絵馬」…歌仙絵は有名な歌人を描いた絵馬の画題のひとつ。平安時代、藤原公任が三十六人の歌人をあげそれぞれの歌各一首を選んだものがきっかけとなり、鎌倉時代になって左右十八番が分けられ、その肖像と歌を描いた歌仙絵が盛んに描かれるようになった。
さらに、室町時代に入ると、歌道の上達を願い絵馬にして神社仏閣に奉納する慣習が広まったという。
写真の南今市「絵馬講」のものは縦30センチ、横24センチの板に描かれている。裏面に奉納者の名が墨書されるのみで、画家・書家の銘はない。
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更新日:2021年03月01日