葛城市の農産物のご紹介(第4回: 酪農)

ご存知ですか?
葛城市の農業生産額は県内39市町村の中で第6位、中でも酪農(乳用牛)の生産額は県内第2位です!
(参考)
1位 五條市 142
2位 葛城市 49
3位 安堵町 30
3位 宇陀市 30
5位 御所市 25
表出典: 令和5年市町村別農業産出額 (単位: 1,000万円)
日々の生活を支え、葛城市にとって欠かせない産業でもある「農業」をもっと身近に。
そんな思いから、数か月にわたり葛城市の農産品をご紹介します。第4回でご紹介するのは「酪農」です。 市内の生産者さんにお話を伺いました。
なお、本インタビューは令和7年広報かつらぎ12月号にも掲載されています。
葛城市における酪農
――葛城市で酪農が盛んなのはなぜでしょうか?
この地域の酪農は、奈良県内でも最も長い歴史を有するのではないかと思います。大正時代に、当時の忍海村の村長であった辻本正兵衛氏が酪農を奨励されました。
年中仕事があるという産業振興の観点に加えて、今後は時代とともに牛乳消費量が伸びるだろうと、その当時は考えられたのだろうと思います。
昔は忍海駅の前に集乳所がありましたので、各戸で搾った乳を処理加工して、各家庭へ宅配していました。長男が牛飼いをし、次男が配達をするというふうにしていたので、一家で仕事があり、今で言う「地産地消」もできていたのです。
平岡や北花内など、当時の村内における乳牛の養育農家は50戸を上回っていました。
忍海酪農会館には、辻本正兵衛頌徳碑(しょうとくひ)が慰霊碑とともに建っています。
忍海酪農組合の創設者でもある辻本正兵衛氏の頌徳碑
――その他に何か生産に適している条件などはあるのでしょうか?
葛城市は、大阪を含めた一大消費圏に近い生産地でもあります。
たとえば北海道から関西まで運ぼうとすると、日数的に消費期限ギリギリになってしまいますので、そういう意味で一大消費圏に近いという地の利はありますね。
また、内地(牛舎のような屋内)で育てると、生クリームが白くなります。
北海道などで草を食べて育つとカロテンの影響で黄色っぽい生クリームになります。どちらも栄養価には変わりがないのですが、ケーキ用の生クリームに加工する際には真っ白なほうが好まれることもありますので、そういう利点もありますよ。
酪農の仕事について
――1日のお仕事はどのようなスケジュールですか?
朝5時頃に起きて、餌を用意して、餌をやり、子牛の哺乳をします。搾乳をして、また餌をやります。
昼間は時間が少し空いて、夕方の4時頃から同じパターンでやります。生きた牛が相手なので、365日同じスケジュールで繰り返します。決まった時間に決まった餌を与えるほうが、牛の調子が良いのですよ。
牛舎の清潔さもおいしさにつながるそうだ
――年間を通じて同じ餌を与えるのですか?
同じです。むしろ変えないほうがいいです。
同じものを与え続けることで、牛のお腹の中の微生物を同じ状態で保つことができるからです。人間のように食べるものをかえるよりも、同じものを同じように食べる方が牛の状態は良くなります。
同じ配合で飽きが来ないという意味では、育てる側からすると楽ですね。
――牛は何を食べているのですか?
基本的には草を食べます。繊維のもん(粗飼料)と、乳を出すための濃厚飼料の組み合わせで、粗飼料と濃厚飼料を10キログラムずつ、両方あわせて20キログラムほど食べます。
濃厚飼料は、麦やとうもろこしなどですね。繊維がある方が良いので麦は皮ごと、とうもろこしは実を潰した状態の飼料になっています。配合比率は、タンパク質やカロリーなどを計算して飼料メーカーが決めています。
与える餌の中には綿の実も入っています。綿は内側に油っけがあり、外側は繊維が豊富です。
牛には胃が4つあり、反芻(はんすう)をします。つまり、一度食べたものを口に戻して、それを食べ直してお腹に戻します。反芻をするためには、綿の実のような繊維が含まれた食べ物が必要なのです。
「いつもの味」が美味しさの秘訣
――飼料が値上がりしていると思いますが、それに対する工夫等はありますか?
日本の畜産飼料は輸入品がほとんどです。昔は1ドル70円の時期は餌が楽に手に入りましたが、今は円安が止まりません。そのため、飼料は値上がりしています。
工夫と言えるかはわかりませんが、和牛の出荷をしています。
今まではホルスタインのメスができたらそれを後継牛にして、大きくなったら乳を搾って、という循環で経営をしていました。しかしホルスタインのオスは出荷してもほとんど値がつきません。そこで肉用の和牛の出荷をしています。
生後2ヶ月ほど育ててから、和牛の飼育農家に売ります。
和牛の子牛も生活の支えになっている
――牛はおとなしいですか?
おとなしいです。ホルスタインの成牛の体重は600キログラムほど(生後2ヶ月の和牛の子牛でも50−60キログラム)ほどありますから、暴れ出してしまうと人間の手ではどうしようもありません。
昔は気性の荒い牛もいましたが、おとなしい系統の牛を選抜しますから、荒い牛は淘汰されていきました。今は搾乳しやすくおとなしい牛に改良されています。
――牛を育てるのに適している気候や条件はありますか?
ホルスタインはヨーロッパ原産なので寒さに強く暑さに弱いです。
日本は夏が暑いので牛舎の温度管理が大変です。クーラーを入れようと思っても電気代が高すぎるので、巨大な扇風機をいれています。霧を吹いて気化熱で冷ましたりすることもあります。
――1日どのぐらいの量を搾乳するのでしょうか?
25頭ほど飼育しており、あわせて毎日600キログラムほど搾乳します。
昔は手搾りだったので、1頭あたり15分ほど搾乳にかかっていましたが、現在は軽い牛なら5分ほどで搾乳できます。
最初に登場した機械はバケットミルカーといって、バケットを横において機械にかけて搾るものでした。その後、現在も使っているパイプラインミルカーに置き換わりました。パイプラインミルカーになってからは搾乳できる量もぐっと増えましたよ。
パイプラインミルカー(ステンレス製のパイプに牛乳が通る)
――毎日搾乳する上で大変なことはありますか?
牛舎をきれいに保っていても、牛の抵抗力が落ちると乳房炎という病気にかかることがあります。
完治まで10日ほどかかるのですが、治療のために抗生物質を使うと、メーカーの検査で抗生物質が検出されなくなるまでは、商品としてその牛の乳を出すことができなくなってしまいます。
その牛乳を飲んだ人に抗生物質が効かなくなってしまうと困りますからね。
葛城市産の牛乳を買うには
――葛城市産の牛乳を判別する方法はありますか?
奈良県産として一元集荷されているので、葛城市産の牛乳と判別する方法はありません。
夜中の2時頃に集乳してもらい、魔法瓶のような容器で温度管理をしながら、大手の乳業メーカーの神戸工場まで持っていっています。
――おすすめの調理方法はありますか?
飛鳥鍋(あすかなべ)といって、すき焼きに牛乳を入れて食べると美味しいです。また、牛乳を炊いてお酢を入れて濾すとカッテージチーズのように食べることもできます。
牛乳をそのまま飲むのもおすすめです。牛乳はビタミンやミネラルが含まれる「完全栄養食品」と言われています。
たとえば今は物価高と言われています。そんな時期にこそ、牛乳をしっかり飲んでもらって栄養を補うのが経済的なのではないでしょうか。
取材協力(生産者さんについて)
取材協力ː おくむらさん
――酪農を始められたきっかけはなんですか?
卒業後に父の跡を継いで酪農を始めました。もう60年ほどになります。
当時は新卒で務めると月給が1万円ほどの時代でしたが、牛飼いをしていると月10万円ほどでした。当時としては割が良かったこともきっかけの1つでした。
――生産で大変だと思うことや苦労されることはありますか?
365日休みなしというのは、土日休みの現在で考えると大変かもしれません。
たとえばお正月はヘルパーさんもお休みなので、家の手だけでやらなければいけません。
結び
- 古くから県内有数の酪農地帯である
- 地の利を活かしている
- 大手乳業メーカーに出荷している
インタビューを通じて葛城市の酪農の魅力が見えてきました。そんな魅力を少しでもお伝えできたでしょうか?
酪農の歴史については以下のページでもご紹介しております。
また、今後もホームページにて葛城市の農産物をご紹介します。以下のページも併せてご覧ください!













更新日:2025年12月01日